谷保 玲奈
学生のみなさまへ
絵を描いている最中というのはとても孤独です。
きっと学生のみなさんも孤独を抱えながら日本画というもの、絵画や自分が描きたいもの、好きなものがなんなのか模索している最中かと思います。特に昨今は思うように学校で制作が出来なかったり、講評や授業がリモートで行われていることによって相談や雑談をする機会が減ってしまい、より一層孤独感は強まっていることかと思います。
私も昨年は全てのやる気が一度消え去ってしまいました。急に社会から放りだされたような、なんの予定も無くなってしまいました。
しかしそんな中発表も出来ない、絵を描く気力を奪われる、そんなことがあってたまるか、自分をずっとここへ置いてなるものかと燃える気持ちが沸き立ち、今しか出来ない事、やるべき事があるはずだと模索し、新しい試みとして絵画を用いた実験的な映像作品を作りました。
時代とともに、変わっていくもの、変わらなければならないもの、普遍的なもの、変えたくないもの、はどの立場においてもあるかと思います。私も作品において譲れないもの、そして変化していきたいものと両面を持ち続けながら活動しています。
どんなことがあっても私に生きる喜びも、絶望も与える絵画から私は決して逃げ去ることはないでしょう。
なぜこの時代に自分は大学生をしているのか、そこにはなにかしらの意味があるのかもしれないし、ないのかもしれない。
この新しい時代を一緒に切り抜け、進化していけたら嬉しいです。
どこかでお会いできることを楽しみにしています。
谷保玲奈
(2021年度「第6回 石本正日本画大賞展」に寄せて)
【略歴】
1986年 東京生まれ
2011年 碧い石見の芸術祭2011 美術大学選抜日本画展 浜田市長賞受賞
2012年 多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻日本画領域修了
第5回東山魁夷記念 日経日本画大賞 入選
2014年 第25回五島記念文化賞 美術新人賞
ARKO Artist in Residence Kurashiki, OHARA 作品公開/大原美術館
2015年 第6回東山魁夷記念 日経日本画大賞 選考委員特別賞受賞
2016年 第52回神奈川県美術展 神奈川県立近代美術館賞受賞
2017年 個展「ウブスナ」(日本橋髙島屋ギャラリーX)
2018年 第7回東山魁夷記念 日経日本画大賞 入選
個展「共鳴」NAP New Artist Picks(横浜美術館)
2020年 横浜三溪園旧燈明寺本堂内個展 「蒐荷」
2021年 第8回東山魁夷記念 日経日本画大賞 大賞受賞